「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」とは? メリットや課題をわかりやすく解説
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いま、「農地で作物を育てながら、電気もつくる」という新しい取り組みが世界中で注目を集めています。日本でも着実に広がりを見せているこの仕組みが、「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」です。
この記事では、営農型太陽光発電の仕組みやメリット、そして普及に向けた課題をわかりやすく解説します。
1. 太陽の光を「農作物」と「電気」で分け合う仕組み
営農型太陽光発電とは、畑や田んぼの上に支柱を立てて太陽光パネルを置き、下で農業を続けながら、上では発電を行う仕組みです。
「光の分け合い」を可能にする植物の性質
植物には、太陽の光を一定以上浴びると、それ以上は光合成のスピードが上がらなくなる性質があります。
そこで、「作物が育つのに必要な光」は確保し、「余った光」を発電に有効活用しよう、というのが営農型太陽光発電の仕組みです。
イメージ図
光を分け合う目安となる「遮光率」
農業と発電で太陽光を分け合う際の目安となるのが「遮光率」です。これは、太陽光パネルや支持物によってどの程度太陽の光が遮られるのかを示す指標です。具体的には、太陽電池アレイの外郭平面積に対する太陽電池モジュール及び支持物などが占める平面積の割合で表します(下図参照)。
お米のように光を多く必要とする作物の場合は太陽光パネルの隙間を広くして遮光率を低くし、日陰を好むキノコ類などの場合は、太陽光パネルの隙間を狭くして遮光率を高くするなど、作物に合わせて調整する必要があります。
出典: 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン」(2025年版)を元に執筆者作成
営農型太陽光発電を始めるためのルール:「一時転用許可」とは?
基本的に、農地を別の目的に使用することは厳しく制限されています。そのため、農地に太陽光パネルの支柱を立てる際、農地を一時的に別の目的で使用するための「一時転用許可」という行政(都道府県知事など)の許可を得る必要があります。
2023年度末までに全国累計で6,000件以上の営農型太陽光発電のための一時転用許可実績があります。
2. なぜいま、注目されているの?
主に「農家」と「日本全体」、2つの視点からメリットがあります。
① 農家の収入安定と、地域の課題解決の糸口への期待
天候や市況に左右されやすい農業ですが、電気を売って得られる収入や電気の自家消費による経費削減で経営を安定させることで、後継者不足の解消や、耕作放棄地の活用につながることが期待されています。
また、災害時には営農型太陽光発電設備が地域の非常用電源としても役立ったという事例があります。(農林水産省 「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」 事例2 災害時の非常用電源としての活用 参照)
② 日本の「食料・エネルギー問題」への貢献
日本の食料自給率は、約38%(2024年度カロリーベース)と他国に比べて低い水準にあります。 営農型太陽光発電によって農家の経営が安定し、農地が守られることは食料自給率の改善につながります。
また、日本はエネルギー自給率も約16%(2024年度)と低く、電気は輸入化石燃料による火力発電に頼っています。農地を有効活用してクリーンな電気をつくることは、エネルギー自給率の観点からも非常に重要です。
3. 太陽光パネルの下で、本当にお米や野菜は育つ?
「太陽光パネルの日陰になって作物が育たないのでは?」と疑問に思うかもしれません。この点に関して、大学などにおいて太陽光パネルの下で作物を上手く栽培する方法や農業と発電を両立する工夫が研究されています。
収量や品質へのマイナスの影響(東京大学の研究)
日本の主要作物であるお米の栽培(稲作)に関して、東京大学の研究では、田んぼの上に太陽光パネル(遮光率27%)を置いて調査した結果、お米の収穫量が約2割減少し、味や品質にも影響があったという結果が公表されています。
猛暑から作物を守る「高温対策」としての効果(千葉大学・帯広畜産大学の研究)
一方で、日陰になることがプラスに働くケースもあります。
千葉大学と帯広畜産大学の研究では、猛暑において、太陽光パネルが強すぎる直射日光を適度に遮ることで、農作物の葉焼けや高温障害を防ぐ効果があることが示されています。
環境変化を乗り越える「品種選び」の重要性
研究では、同じ作物の中でも、遮光による影響を受けやすい品種とそうでない品種が存在することが確認されており、今後より適切な品種選びを含め営農型太陽光発電に適した栽培体系が確立されることが期待されています。
設備面の工夫
作物の生産に太陽光パネルや架台を上手く活用している事例もあります。
例えば、抹茶の原料となる「てん茶」の栽培において、もともと収穫前に日光を遮る必要があるところ、太陽光発電の電力により、てん茶栽培の被覆に必要な寒冷紗を、遠隔で自動開閉できるシステムを採用し、棚設置の省コスト、省力化を実現した事例もあります。(前掲 農林水産省 「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」 事例3 お茶栽培への架台有効活用 参照)
4. 普及に向けたハードルと課題
期待が大きい一方で、解決すべき課題もあります。
農業への支障
農林水産省の調査では、2023年度末時点で稼働している営農型太陽光発電設備5,167件のうち、1,221件(約24%)について下部農地での作物の生産に支障が生じていると報告されています。
地域との共生
営農型太陽光発電は長期間農地を活用するため、周辺の農業環境への配慮が不可欠です。事業の普及には、事前の丁寧な説明を通じて地域住民と十分な合意形成を図ることが求められます。
事業の経済性と人材不足
通常の太陽光発電より架台の設置費用が高く、資金調達の環境も十分ではありません。
また、「農業と発電」の両方に取り組む人材をどう確保するかが問われています。
5. 課題解決へ。国がまとめた「これからの望ましい姿」
こうした課題に対して、国はルールの見直しに乗り出しています。農林水産省の有識者検討会では、次のような方向性がまとめられました。
「農業を続けること」が大前提
発電優先ではなく、「農作物を継続して生産すること」や「地域の役に立つこと」を基本方針とする取り組みを認めます。
あるべき姿の明確化
適切に農業を行うために、「遮光率を30%未満に抑える」、「支柱の高さや間隔(幅)を一定以上とする」といった形状や形態について、国が考える「あるべき姿」を明確化します。
なお、遮光率30%とは、お米・麦・大豆について、適切な栽培管理を行うことを前提に太陽光パネルを設置しても収穫量(単収)の減少を2割以内に抑えることができる水準とされています。
市町村による認定制度への移行
従来の農地法に基づく規制に加えて、農林漁村再生可能エネルギー法に基づき、地域との合意形成が行われた適正な計画に限り、市町村が認定する新たな仕組みへと移行し、国と自治体が連携して不適切な事業を指導・監視します。
6.営農型太陽光発電を推進する立場からの期待と要望
国の検討会での議論と並行して、営農型太陽光発電を推進する団体・ネットワーク等からは、社会実装に向けた具体的な要望もあがっています(下記は例示)。
現場の実情に合わせた柔軟なルール設計
特定の作物を想定した遮光率で一律に規制するのではなく、栽培する作物や地域に適した指標や、技術革新にも対応できる基準が必要であると指摘しています。
適正な事業者への積極的な支援
不適切案件の排除にとどまらず、地域や農業に貢献する優良な取り組みを積極的に評価・推進する制度(総合評価制度やインセンティブの付与など)を求めています。
まとめ:これからの日本の農業とエネルギーを支えるために
営農型太陽光発電は、農業と環境を守りながら日本の未来を支える仕組みとして、以下のポイントが重要になります。
農業の継続を前提とした発電
発電を優先して農作物の生産がおろそかにならないように、農業の継続を前提とした事業運営を図る必要があります。
太陽光パネル下での営農に関するデータやノウハウの蓄積・共有
農業と発電を両立させるためには、適切な設備設計だけでなく、品種の選択やスケジュールの調整などを含め、様々な工夫が不可欠であり、データやノウハウの蓄積・共有が重要です。
適正な普及に向けたルール整備と支援
農業への支障や地域との共生といった課題に対応するため、国はルールの厳格化や市町村による認定制度への移行を進めています。今後は、現場の実情に合わせたルールの整備・運用、研究の深化や知見の共有、資金や人材面での積極的な支援など、官民が連携して課題を乗り越えていくことが求められています。
【監修者コメント】
営農型太陽光発電は、気候変動・エネルギー問題と食料問題の同時解決や地域の活性化のために期待される有望なアプローチですが、そのポテンシャルを最大限に発揮させるためには、社会全体でまだまだ沢山の試行錯誤が必要と考えます。まず、新たな農業技術であるため、パネルや架台との共生を前提とした栽培技術体系を確立していく必要があります。農業のスマート化に必要な電源確保や農機具の電化とあわせて、新たな時代の農業の在り方の1つとして、多様なアイディアを出しながら検討することが有効でしょう。まだまだ研究が必要ですし、知見・データの共有の仕組みも不可欠です。一方、地域で実装されるものであるため、適切かつ継続的に農業が行われ、地域社会・周辺環境と共生する取り組みとなるよう、地域での適切なガバナンスの仕組みも必要だと考えます。ただし、政府も不適切案件の取り締まりに向けて規律強化を図っていますが、これが営農型太陽光発電の可能性を潰し、より良い形につながるイノベーションを阻害するようなことにならないように、留意する必要があると考えます。むしろ望ましいものは増やしていくのだ、という目標を掲げ、事業者にも政府や地域関係者にも、「これからの農業」と「地域の未来」を一緒に作っていく意識が必要ではないかと思います。
参考文献
・長島彬 「『ソーラーシェアリング』のすすめ」(改2014a)
・農林水産省 「営農型太陽光発電について」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html
・倉阪秀史 「営農型太陽光発電に対する全国農業委員会調査から」 (2025年3月31日) https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900123256/S18814859-21-1-P398.pdf
・農林水産省 「農地転用許可制度について」 https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/nouchi_tenyo.html
・農林水産省 「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2025年度版)」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-61.pdf
・農林水産省 「営農型太陽光発電設備設置状況等について」 (令和5年度末現在) https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-64.pdf
・資源エネルギー庁 「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」(2026年4月14日) https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/honbun2024fykaku.pdf
・農林水産省 「世界の食料自給率」 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html
・東京大学大学院農学生命科学研究科 「水田農業と再生可能エネルギー生産の両立は可能か? ――“ソーラーシェアリング”が水稲の収量と品質に与える影響を解明――」(2025年4月2日) https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20250401-1.html
・千葉大学 帯広畜産大学 「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)で何をどう栽培すべきか? ―複数の作物、品種、栽培方法を初めて検証―」(2026年2月4日) https://www.chiba-u.ac.jp/news/files/pdf/260204_solar.pdf
・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン」 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP2_100400.html
・農林水産省 「望ましい営農型太陽光発電に関する検討 https://www.maff.go.jp/j/study/250609.html
・⼀般社団法⼈ソーラーシェアリング推進連盟 「『食とエネルギーの自給率を高める』太陽光発電活用型農業の推進を!農林水産省『望ましい営農型太陽光発電に関する検討会』への改訂版意見書まとめ版」(2026年3月22日) https://solar-sharing.jp/topics/7818/
・一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 営農型太陽光発電社会実装推進コンソーシアム 「「望ましい営農型太陽光発電」の社会実装に向けた政策提言 ~農地の価値を高め、食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に強化するために~」(2026年6月8日) https://platinum-network.jp/2026/06/08/10/04/