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再エネの疑問

再生可能エネルギーの課題とは? 再エネの変動性と電力システムの柔軟性・安定性をわかりやすく解説

INDEX目次

近年、気候変動対策やエネルギー自給率向上のため、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)の主力電源化が進められています。

その一方で、「再エネは不安定だ」という声や、太陽光の発電が多い時期などに発電を一時停止させる「出力制御」が行われたというニュースに接して、「なぜ?」と疑問に感じている方もいるかもしれません。

この記事では、電気が届けられる仕組みに触れながら、なぜ再エネは不安定と言われるのか、また、再エネが増えた際にどのような対策が必要となるのかについて、わかりやすく説明します。

1. 電気が家庭に届くまで 電力系統の仕組み

私たちが普段何気なく使っている電気が離れた発電所から安定して届けられている裏側では、高度な調整が24時間行われています。

発電所から家庭のコンセントまでを結ぶ物理的な設備のつながりを「電力系統」、そこに市場や取引ルールを含めた社会的な仕組み全体を「電力システム」と呼びます。

① 電力系統を守る「3つの安定性」

電力系統を通じて電気が安定して届けられるためには、以下の「3つの安定性」を維持する必要があります。

  • 周波数安定性: 需要と供給のバランスを保ち、電気の波のスピード(周波数)を一定に保つ。

  • 同期安定性: 電力系統につながる複数の発電機が連動して、足並みを揃えて回転し続ける。

  • 電圧安定性: 電気を押し出す圧力(電圧)を一定に保つ。

② 「周波数」と「同時同量の原則」

私たちが家庭で使っている電気は、プラスとマイナスが常に入れ替わる「波」のような形で送られてきます。この1秒間における波の数を「周波数(ヘルツ:Hz)」と呼びます。日本では歴史的な背景から、東日本は「50Hz」、西日本は「60Hz」と周波数の基準が分かれており、これが一定に保たれることで電力系統が安定します。

周波数を一定に保つために重要なのが、「消費する電力の量(需要)」と「発電する電力の量(供給)」を常に一致させなければならない「同時同量の原則」です。

私たちが電気を使うと、発電機の回転のスピードを遅らせるブレーキ(逆トルク)がかかります。電力の需給バランスが崩れると、このブレーキの強弱が変わり、発電機の回転スピードが変化して周波数が乱れてしまいます。そのため電力系統では、需給の変動に合わせて即座に対応できる「調整力」(蓄電池や火力発電など)を常に待機させ、需給バランスを維持しています。

③ 需給バランス崩壊が招く「ブラックアウト」

異常な周波数のまま発電機が無理に回り続けると、精密なタービンが激しい振動を起こして物理的に破壊されてしまいます。それを防ぐため、安全装置が働いて自動で発電機を電力系統から切り離して自衛します(解列)。

ひとつの発電所が解列して抜けると、残った発電所への負担が増して周波数がさらに乱れます。その結果、他の発電所も次々とドミノ倒しのように解列してしまい(カスケード現象)、最悪の場合、エリア全体の大停電である「ブラックアウト」に行き着いてしまいます。

④ 電力系統の安定性を支え続けてきた「同期発電機」

このような大停電の連鎖を防ぎ「3つの安定性」を維持する機能を有しているのが、火力発電などの回転機(同期発電機)です。

同期発電機は巨大な鉄の塊であり、ペダルを止めても走り続ける自転車のように、回り続けようとする物理的な勢い(慣性)があります。需給バランスが急変した瞬間でも、この「慣性」がクッションとなって急激な周波数低下を食い止めます。さらに、磁力で発電機同士の足並みを揃え(同期化力)、電気の流れ(潮流)や電圧を整える能力も兼ね備えており、物理的に電力系統全体の安定性を支えています。

2. 再エネの大量導入に伴う課題

電力系統の基本的な仕組みがわかると、再エネが大量に導入された際の課題が見えてきます。

  1. 物理的な支えの喪失(安定性・質の低下): 太陽光発電や風力発電は、インバータという電子機器を介して電気を出力します。現在普及しているインバータは、同期発電機のように電力系統の安定性を維持する機能がありません。そのため、対策がないまま再エネが増えて同期発電機が減ると、電力系統の安定性が損なわれる懸念があります。

  2. 気象条件による変動(柔軟性・量のコントロール): 太陽光発電や風力発電は、天候などによって出力(発電電力量)が大きく変動します。そのため、発電量の過不足に合わせて出力を増減できる「調整力」を確保し、別の発電機や蓄電池を動かすなど、電力システム全体の柔軟性(フレキシビリティ)を高める必要があります。

国際エネルギー機関(IEA)は、再エネが増えて電力システムに統合される過程を6つのフェーズ(段階)に分類し、それぞれの段階での課題や対策をまとめています(下表参照)。

現在、日本全体は「フェーズ3」、九州エリアはさらに進んだ「フェーズ4」に達しているとされています。

出典:IEA「Integrating Solar and Wind」を参考に執筆者作成

3. なぜ必要? 出力制御が行われる2つの場面

再エネの導入が進んだ段階で頻繁に用いられる対策のひとつが、発電の一時的な停止(出力制御)です。

出力制御は電力系統の安定性を維持するために、次の2つの場面で行われます。

  1. 需給バランスの制約(エリア全体の供給過剰): 需要が少なく発電電力量が多い時に電気が余ると周波数が上昇し、大規模な停電につながる恐れがあります。日本では「優先給電ルール」に基づき、火力発電の出力引き下げや揚水発電の活用といった対策を行った上で、それでも余る場合に発電の一時停止が行われます。

  2. 送電網の混雑(局所的なインフラの限界): エリア全体で電気が余っていなくても、電気を運ぶ「送電線」の容量が上限に達する(渋滞する)と、それ以上電気を送れずに発電を一時停止せざるを得なくなります。

再エネの導入が進んだフェーズ4以上の段階では、「出力制御を完全にゼロにすることが必ずしも正解ではない」という発想の転換が必要になります。その理由は、年に数回しか起きない極端な余剰電力をすべて使い切るために巨大なインフラを過剰に整備すれば、電気代が高騰してしまうからです。つまり、ある程度の出力制御はシステム全体のコストを抑える「経済的に合理的な選択」になり得ます。

ただし、これは、「出力抑制を行えば、これ以上の対策は不要」という意味ではありません。送電網や蓄電池への投資が遅れ、過度な出力制御が常態化してしまえば、管理コストの増大や、せっかくのクリーンな電力の大規模な無駄が発生します。そのため、再エネの最大限の利用(再エネ出力制御量の低減)に向けた取り組みが進められています。

4. 再エネの主力電源化に向けた次世代の対策

すでに日本でも次世代インフラへの移行に向けた動きが始まっていますが、IEAは、再エネの急速な拡大に伴い、電力システム全体で「柔軟性の向上」と「既存インフラの最適活用」を進める対策が世界的な急務となっていると説明しています。ここでは、IEAの「Integrating Solar and Wind」や「Electricity 2026」で紹介されている具体的な取り組み事例の中から、今後、日本でも取り組みの強化が期待されるものを取り上げます。

【発電分野:人工的な安定性の創出】

再エネが増加して従来型の火力発電が停止する時間帯が生じると、システム全体の周波数安定性を支える「慣性」が低下します。これを補うため、インバータ自体が自律的に電圧波形を作り出して疑似的な慣性をシステムに提供する「グリッドフォーミング(GFM)インバータ」の導入や、既存発電機を燃料消費ゼロの「同期調相機」に転用する取り組みが進められています。

【蓄電分野:市場を動かす大規模蓄電池のポテンシャル】

系統用蓄電池は、単なる余剰電力の吸収にとどまらず、電力システムのコストを大幅に削減する成果を上げています。豪州の南オーストラリア州では、蓄電池の拡大によりアンシラリーサービス(周波数調整等)の関連費用が前年同期比で55%も減少しています。また、米国のカリフォルニア州では、制度的な後押しにより平均3.4時間の長時間放電が可能な大規模蓄電池の導入が進んでいます。

【送配電分野:既存インフラの動的・最大活用(GETs)】

送電網の新規建設には多額の費用と時間を要するため、高度な制御技術を用いて既存の系統容量を最大限に引き出す「グリッド拡張技術(GETs)」の導入が不可欠とされています。英国では、電力の流れを混雑した送電ルートから空きのあるルートへと動的に迂回させる「高度潮流制御デバイス(APFC)」を導入し、2GW以上(ピーク負荷の4%超)の送電容量を創出することに成功しています。

【需要側設備:数百万規模の自動的な需要シフト】

英国の「デマンド・フレキシビリティ・サービス(DFS)」では、冬季の需給逼迫時に数百万の家庭や企業が価格シグナルに応じて需要をシフト(ピークカット)させることに成功し、数GWh規模の柔軟性をシステムに提供する世界最大級の実績を上げています。

5. まとめ

  • 再エネの主力電源化には、安定性と柔軟性という2つの課題への対策が必要です。

  • 「出力制御」は、需給バランスの崩壊や送電網の混雑による大規模停電を防ぐための対策のひとつです。再エネの導入が進んだ段階では、ある程度の制御を許容する方が社会全体のコストを抑える合理的な選択肢になり得ますが、電力システムの柔軟性を向上させ、再エネの出力制御量を低減する取り組みは必要です。

  • 今後は、次世代インバータや大規模蓄電池の導入などによる電力の供給側の対策とともに、再エネの発電状況に合わせて需要を調整する「デマンドレスポンス」の普及が必要です。一般家庭も含めた私たちが「電力系統を共に支える参加者」へと役割を変えることが、次世代の電力システムを構築する鍵となります。

監修者のコメント

これまでは、大規模な火力発電機(同期発電機)が一極集中型で供給力と系統安定性を支えてきました。再エネの主力電源化には、本文にあるように、同期発電機が支えていた役割を蓄電池やインバータで代替する技術に加え、個別の事業者が保有している多数の分散型リソースを効率的に協調させることが課題となります。

その協調を実現する重要な手段が市場設計です。国際エネルギー機関(IEA)の6つのフェーズで示されているように、日本でも需給調整市場などの制度設計や改善が進められています。市場整備を通じて、再エネ設備や蓄電池が提供する調整力や供給力、系統安定化機能といった価値が適切に価格に反映され、その結果、投資や運用のインセンティブが生まれることで、再生可能エネルギーの持続可能な導入拡大が進むことが求められています。

参考文献

・電力広域的運営推進機関(OCCTO) 「送配電等業務指針」(2026年4月1日変更)        https://www.occto.or.jp/assets/occto/article/shishin2604.pdf

・国際エネルギー機関(IEA) 「Integrating Solar and Wind」(2024年9月)https://iea.blob.core.windows.net/assets/4e495603-7d8b-4f8b-8b60-896a5936a31d/IntegratingSolarandWind.pdf

・国際エネルギー機関(IEA) 「Electricity 2026」(2026年2月) https://iea.blob.core.windows.net/assets/b73798cb-e452-42b9-9d8a-07542de7a041/Electricity_2026.pdf

・資源エネルギー庁 「なるほど!グリッド」 出力制御について https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/grid/08_syuturyokuseigyo.html

・一般社団法人送配電網協議会 「再生可能エネルギーの最大限の利用に向けた取組み」(2026年4月27日) https://www.tdgc.jp/information/2021/08/16_1610.html

・資源エネルギー庁 「第7次エネルギー基本計画」 (2025年2月18日閣議決定) https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20250218_01.pdf



再エネポータル編集部
執筆者 再エネポータル編集部
分山 達也
監修者 分山 達也 国立大学法人東京科学大学