国内初の大規模浮体式洋上風力発電所「五島洋上ウィンドファーム」
INDEX目次
サムネイル画像(五島洋上ウィンドファームの写真) 出典:戸田建設
1. はじめに
四方を海に囲まれた日本の地理的特性を活かして、海に風車を設置して発電する「洋上風力発電」の取り組みが進められています。
洋上風力発電には、大きく分けて、風車を海底に固定する「着床式」と、チェーンなどで海底とつないで風車を浮かべる「浮体式」の2つの種類があります。日本では、着床式が設置できる水深60m以下の遠浅の海域は限られており、深い水深の海域でも設置できる浮体式に期待が集まっています。
こうした中、長崎県五島市沖で、国内初となる大規模な浮体式の洋上風力発電所「五島洋上ウィンドファーム」が2026年1月5日に商用運転を開始しました。
戸田建設株式会社(以下、「戸田建設」)を代表とする6社が参画する合同会社の運営により、出力合計16.8MW(2.1MW機×8基)の発電設備が稼働しています。
2. 世界初の技術で低コストかつ高い安定性を実現&地域経済に貢献
五島洋上ウィンドファームには、世界で初めて実用化した「ハイブリッドスパー型」という日本の技術が使われています。
ハイブリッドスパー型の構成図
出典:戸田建設
ハイブリッドスパー型は、風車を支える浮体の上部が鋼、下部がコンクリートで造られており、コストを抑えつつ、安定性の高い構造を実現しています。
また、「ハイブリッドスパー型」の浮体を横倒しで建造することで地盤にかかる力が分散され、地盤耐力の小さな地元の港の岸壁でも建造が可能になりました。さらに、国の認定を受けた事業計画に基づき、浮体の鋼製部分は長崎県内の鉄工所や造船所に建造を依頼し、コンクリートは五島市内の企業から調達するなど、地域の企業が参画する形で事業が進められました。
戸田建設の佐藤洋人さんは、「五島では、若い人が進学や就職で地元を離れたまま帰らずに人口が減少し、高齢化が進んでいます。洋上風力によって、新しい産業と雇用が生まれました。」と話しました。
3. 漁業・地域との共生
海は漁業など多様なステークホルダーが関わる場所です。五島洋上ウィンドファームの建設過程では、漁業影響調査を行い、漁業との共生策について多様なステークホルダーとの対話を積み重ねてきました。
例えば、風車の水中部分には海藻が付着し、周辺に魚が集まっていることが確認されるなど、漁業や海洋環境との調和に向けた取り組みが進められています。
また、五島洋上ウィンドファームでは、エネルギーの地産地消にも取り組んでいます。発電した電気は、優先的に地域の小売電気事業者に送られ、五島市の家庭や企業などに届けられています。
4. 再エネの有効利用
さらに、洋上風力の電気を有効利用するための取り組みも進められています。
九州地方では、発電量が需要量を上回る際などに発電を止める出力制御が頻繁に実施されています。
出力制御指令が発令されると、発電できるにもかかわらず発電を止める(発電量が減る)ことになります。そこで、戸田建設は、地元のメンテナンス企業と共同で、再エネを無駄なく最大限利用するため、系統用蓄電池の運用技術開発を進めています。
具体的には、2025年度から五島市が実施する系統用蓄電池運用技術開発事業に参画して、蓄電池の充放電を制御するアルゴリズムや運用システムを開発し、五島市内の系統用蓄電池に導入して、再エネを有効利用できるようにすることを目指しています。
参考文献
洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 「洋上風力産業ビジョン(第2次)」(2025年8月8日https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001910877.pdf
戸田建設「浮体式洋上風力発電」https://www.toda.co.jp/business/ecology/special/offshorewind/index.html
戸田建設株式会社、ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社、大阪ガス株式会社、株式会社INPEX、関西電力株式会社、中部電力株式会社 『国内初の浮体式洋上ウィンドファーム 「五島洋上ウィンドファーム」の商用運転開始』(2026年1月5日) https://www.toda.co.jp/news/2026/20260105_006181.html
五島フローティングウィンドファーム合同会社「公募占用計画の概要」(令和5年9月認定)https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001598592.pdf
浮体式洋上⾵⼒発電推進懇談会「⽇本の浮体式洋上⾵⼒発電に対する期待と展望」(2021年9月)https://www.toda.co.jp/business/ecology/special/pdf/fowvs_j.pdf
Tsuchida, S., R.Kato, S.Nishitsuji, et al. 2025. “Floating Offshore Wind Farms Attract Japanese Horse Mackerel.” Aquatic Conservation: Marine and Freshwater Ecosystems35, no. 7: e70189. https://doi.org/10.1002/aqc.70189.
資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会/ 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 次世代電力系統ワーキンググループ(第8回)「再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について」(2026年3月16日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/008_01_00.pdf
戸田建設「令和7年度五島市系統用蓄電池運用技術開発事業」に採択(2025年6月13日)https://www.toda.co.jp/news/2025/20250613_006070.html
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