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再エネの疑問

洋上風力発電とは? 日本における意義・政策的位置づけと導入拡大に向けた課題

INDEX目次

本記事では、洋上風力発電の基本から、国内外の現状、なぜ注目されるのか(主力電源化・エネルギー自給率向上への期待と、日本のポテンシャル)、技術の状況(着床式と浮体式)、そして導入拡大に向けて解決すべき課題までを整理します。

1. 洋上風力発電とは?国内外で進む「海の風を活用した発電」のいま

洋上風力発電(以下、洋上風力)は、風車を海上に設置して、風の力で発電する技術です。一般的に、洋上は陸上に比べて風が強く、また障害物が少ないため安定した風が吹くという特徴があります。

世界の現状

風力発電分野の国際的業界団体であるGlobal Wind Energy Council(GWEC)の「Global Offshore Wind Report 2026」によれば、2025年の洋上風力の新規導入量は約9.3GW(前年比16%増)で、累計導入量は約92.5GWと100GWの大台に近づいています。新規導入の中心は中国(約6.6GW)ですが、中国を除くアジア太平洋地域が2030年までに世界第3位の市場になると予想されており、成長の勢いは欧州からアジアへと広がりつつあります。

こうした拡大の背景には、エネルギー安全保障や産業競争力に対する意識の高まりがあります。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州はロシア産の化石燃料への依存からの脱却と再生可能エネルギー(以下「再エネ」)の導入加速を進めており、自国で生み出せる電源の一つとして洋上風力の拡大が加速しています。加えて、洋上風力は、経済成長を牽引する重要な産業基盤として、サプライチェーンの構築が推進されています。アジアにおいても同様に、洋上風力は、自国のエネルギー自給率を高める「基幹インフラ」であると同時に、次世代の「成長エンジン」として位置づけられています。

日本の現状

日本では、これまで導入された洋上風力の累計設備容量が約490MWとなりました。これには3つの着床式洋上風力発電所(秋田洋上風力発電所、石狩湾新港洋上風力発電所、北九州響灘洋上ウィンドファーム)と、1つの浮体式洋上風力発電所(五島洋上ウィンドファーム)が含まれます。

2022年12月~2023年1月に運転を開始した「秋田洋上風力発電所」(秋田港・能代港、合計出力140MW、4.2MW×33基を設置)は、国内初の商用規模の洋上風力発電所として注目を集めました。

また、2024年1月には「石狩湾新港洋上風力発電所」(石狩湾新港、合計出力112MW、8MW×14基を設置)が運転を開始しました。本発電所では、風車のサイズが8MWに拡大し、大型風車導入の先駆けとなりました。

2026年3月には「北九州響灘洋上ウィンドファーム」(北九州港、合計出力220MW、9.6MW×25基を設置)が運転を開始し、風車のサイズがさらに拡大するとともに、運転開始時点で国内最大の洋上風力発電所となりました。

加えて、2026年1月に運転を開始した「五島洋上ウィンドファーム」(長崎県五島市沖、合計出力16.8MW、2.1MW×8基を設置)は、「再エネ海域利用法」に基づく国内初の商用の浮体式洋上風力発電所です。

2. なぜ注目されるのか? ①主力電源化およびエネルギー自給率向上への期待

「エネルギー基本計画」における位置づけと導入目標

日本では、第5次エネルギー基本計画(2018年7月閣議決定)で初めて、再エネの主力電源化を目指す方針が示されました。第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)からは、再エネを最優先の原則の下で最大限導入するとして、その方針がさらに強化されました。

洋上風力は、第3次エネルギー基本計画(2010年6月閣議決定)からその重要性が認識され、第6次エネルギー基本計画では、洋上風力が再エネの主力電源化の「切り札」に位置づけられました。第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)においてもその方針が継続・強化されています。

洋上風力の導入目標については、2020年12月に発表された洋上風力産業ビジョン(第1次)において、2030年までに10GW、2040年までに(浮体式も含めて)30〜45GWの案件を形成することを目指すという目標が掲げられました。さらに、2025年8月に発表された洋上風力産業ビジョン(第2次)では、2040年の目標(30〜45GW)のうち、15GW以上を浮体式洋上風力で案件形成するという目標が示されています。

洋上風力導入拡大の意義

洋上風力の導入拡大には、複数の意義があります。

第一に、気候変動対策です。発電時に温室効果ガスを排出しない電源として、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献します。

第二に、エネルギー自給率の向上とエネルギー安全保障の確保です。洋上風力は国内で生み出せる電源であり、化石燃料の輸入に頼らないエネルギー供給構造の構築に寄与します。

第三に、産業育成と経済成長です。洋上風力は、発電設備を設置するだけの事業ではありません。風車本体や基礎構造物の製造、海上施工、運転保守など、ライフサイクル全体にわたり幅広い関連産業の投資を伴い、経済成長の機会になります。国内産業の育成も期待されます。

そして、導入拡大を制度面で支えるのが海洋再エネ整備法(旧 再エネ海域利用法です。2019年に施行された同法は、一般海域での長期の海域占用ルールを定めました。さらに2025年6月には改正法が成立し、発電設備を設置できる海域がこれまでの「領海・内水」から「排他的経済水域(EEZ)」にまで広がりました。EEZは水深が深い海域が中心となるため、浮体式が活躍する海域のさらなる拡大が期待されています。


出典:海上保安庁

3. なぜ注目されるのか? ②日本における洋上風力のポテンシャル

「エネルギー基本計画」では、再エネを主力電源として最大限導入する方針が示されていますが、その中で大きな導入量が見込めるのは、太陽光発電と風力発電になります。

四方を海に囲まれた日本は、広大な領海とEEZを有しており、特に洋上風力には大きなポテンシャルがあります。

陸上では、山地が多く平地が限られることや、住宅地・景観・自然環境との調整が必要になるため、大規模な再エネ設備を設置できる場所には制約があります。一方、洋上は広い空間を活用でき、陸上よりも風況が安定しやすいため、大規模な発電設備を導入できる可能性があります。

とりわけ、設置海域がEEZへと拡大したことで、活用できる海の範囲は大きく広がりました。ただし、日本近海は沿岸から離れると急に水深が深くなる海域が多く、海底に固定する着床式だけでは適地が限られます。そのため、深い海域にも設置できる浮体式洋上風力が、日本のポテンシャルを引き出すうえで重要になります。

4. 技術の状況:着床式と浮体式の違いと実用化の状況

洋上風力は、風車を支える構造物の違いによって「着床式」と「浮体式」に大きく分けられます。

着床式の技術と導入状況

着床式は、風車の基礎を海底に固定する方式で、水深が比較的浅い海域に向いています。着床式の技術は成熟しており、現在主流となっているのがこの方式です。前出の秋田洋上風力発電所(140MW)、石狩湾新港洋上風力発電所(112MW)、北九州響灘洋上ウインドファーム(220MW)は、国内の着床式の代表的な実例といえます。

浮体式の技術と導入・技術開発状況

浮体式は、風車の基礎を海に浮かべて係留する方式で、水深が深い海域にも対応できます。着床式に比べると技術の成熟度は低く、GWECによれば、本格的な普及期は2030年以降になると予想されています。四方を深い海に囲まれた日本では、導入できる余地が大きいと見込まれています。国内では、前出の五島洋上ウィンドファーム(16.8MW)がハイブリッドスパー型(上部が鋼、下部がコンクリート)の浮体を用いて稼働しています。浮体式は、コスト低減や量産化に向けた技術開発・実証が進められている段階であり、EEZへの展開とあわせて、今後の導入拡大の鍵を握る技術として期待されています。

5. 洋上風力の課題:導入拡大に向けて解決すべき課題

導入拡大が期待される一方で、洋上風力にはいくつかの解決すべき課題があります。

産業基盤・サプライチェーンの形成: 洋上風力の拡大を持続的なものにするには、風車部材の製造や、施工、保守を担う国内の産業基盤・サプライチェーンを築いていくことが重要です。これは同時に、地域の雇用や経済成長につながる機会でもあります。

港湾・系統インフラの整備: 洋上風力の導入には、各種部材の保管、事前組立、船舶への搭載などを行うための港湾が必要になります。現在も港湾の整備は進められていますが、浮体式洋上風力も含めた大量導入を実現するためには、さらなる港湾機能の強化が必要です。また、洋上風力で発電した電気を利用するためには、電気を送る送電設備(系統)が必要です。現在、系統インフラは大きく不足しており、早急な拡充を進める必要があります。

コスト低減:どのような産業も、新たに立ち上げるためには初期投資(コスト)がかかります。一方で、導入量が拡大し産業が習熟した段階においては、コスト低減が実現されている必要があります。日本の洋上風力は黎明期にあるため、他の再エネと比較して発電コストは高い水準にありますが、将来的な発電コストの低減は普及のための重要命題です。

漁業共生: 海域は漁業をはじめ多くの人々が利用する場です。利害関係者との合意形成の仕組みは海域によって異なり、一般海域では国・自治体と地元関係者の協議や、選定事業者による計画説明の場が設けられています。また、新たに法整備されたEEZ(排他的経済水域)においても利害関係者との協議の枠組みが設けられており、いずれも場合も適切な理解を得ながら進めることが求められます。

環境への配慮: 海域の利用にあたっては海洋環境への配慮が求められます。国による公募海域選定段階の環境配慮、事業者による環境影響評価、協議会における議論と調整、事業開始後のモニタリングなどを通じて、環境に配慮しながら導入を進めることが重要です。

6. まとめ

  • 洋上風力は、国内外で導入拡大が進む再エネです。

  • 気候変動対策に加え、エネルギー自給率の向上によるエネルギー安全保障の確保、産業育成と経済成長にも貢献します。

  • 普及には、産業基盤・サプライチェーンの形成や港湾・系統インフラの正義、コスト低減、漁業共生、環境への配慮といった課題をひとつずつ解消していく必要があります。

  • 日本のエネルギーの安定的な確保に向けて、便益と課題の両面を見つめた建設的な議論を、国民全体で深めていくことが重要です。

監修者のコメント

「なぜ日本は洋上風力の拡大を目指すのか?」

皆さんは、日本に洋上風力は必要だと思いますか?この問いには、賛成する人もいれば、慎重な見方をする人もいるでしょう。洋上風力は日本にとって新たな産業です。その拡大には、サプライチェーン形成、コスト低減、インフラ整備、漁業共生など、多くの課題があります。決して簡単な取り組みではありません。ただ、「洋上風力が日本のエネルギーの未来を担えるかどうかを見極め、その可能性を高めるための取り組みは、今行わなければならない」ということは、多くの方と共有できる考えではないでしょうか。

いまや、再生可能エネルギーは気候変動対策や脱炭素だけでは語れません。国際情勢は不安定性・不透明性を増し、一次エネルギーの約8割を輸入に頼る日本は、エネルギー安全保障上の課題を抱えています。自国のエネルギー源を確保し、エネルギー自給率を上げていくことは、将来世代が安心して暮らせる社会を支えることにつながります。この自国のエネルギー源として、日本の再生可能エネルギーのポテンシャルを踏まえれば、洋上風力が有力な選択肢の一つになります。

「なぜ日本は洋上風力の拡大を目指すのか?」。本記事が、この問いについて考え、議論を深めるきっかけとなれば幸いです。

参考文献



再エネポータル編集部
執筆者 再エネポータル編集部
寺澤 千尋
監修者 寺澤 千尋 株式会社三菱総合研究所